整形外科なら医療法人 サカもみの木会 緑井整形外科(広島市安佐南区)

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股関節HIP JOINT

股関節とは足の付け根にある関節で、大腿骨の先端にある丸い部分(骨頭(こっとう))が骨盤のくぼみ(寛骨臼(かんこつきゅう))に入り込むような構造となっています。
股関節は周囲に多数の靭帯や筋肉などを持って、高い安定性を有していますが、中でも寛骨臼の縁を取り囲むような構造の関節唇(かんせつしん)と呼ばれる軟骨は、関節の安定性に寄与するだけでなく、その損傷により股関節の痛みを発生することが多いという点で重要です。
歩行時など、片足が地面から離れた状態になると、荷重のかかっている側の股関節には体重の約4倍もの力が働くと考えられています。したがって股関節の病気では、歩行時の痛みが強く、歩行障害や跛行(はこう)を生じる頻度が多くなります。
高齢者においては、骨粗しょう症による骨の脆弱(ぜいじゃく)性のため、しばしば転倒による股関節周囲骨折(大腿骨近位部骨折)を生じます。一方、若年者では股関節のケガは比較的まれで、中でも交通事故や転落事故における股関節脱臼がその主なものと言えます。

MIS-THAについて

超高齢化社会を迎えた日本では、いかに健康寿命を、つまりは日常生活が健康上の問題で制限されることなく生活できる期間を保つかが重要となっています。
股関節の病気は健康寿命を脅かす原因の一つとなります。
また、股関節の痛みはなかなか周りの人には理解してもらえず苦労されている患者様が沢山いらっしゃいます。
そのための有効な治療法の一つとして人工股関節置換術(THA)があります。
日本では年間5万件以上のTHAが行われ、今後も手術件数は増加の一途をたどると考えられます。
当院では2010年より最新のAntero lateral supine approach(以下ALSA)法を用いた低侵襲人工股関節手術(以下MIS-THA)を行い、その実績は1000例を越えました。
今股関節の痛みでお困りの方に少しでも参考になればと、当院での人工股関節全置換術(THA)について説明いたします。

当院におけるMIS-THAの特徴

最初にお断りさせて頂きますが、私が行っているMIS-THAは以前に股関節の骨切り術を受けられた方・科懇切周囲の骨折治療を受けられた方など、股関節の手術が初回でない方にも場合によっては対応可能となっておりますが、再置換手術などすべての方には適応にはならないことをご理解頂ければ幸いです。
THAの合併症の一つとして脱臼がしばしば取り上げられます。
股関節周囲には関節包や靭帯さらには筋肉など様々な支持組織があります。人工関節を適切な位置に配置する為に、旧来法ではどうしても一部組織を切断・切除する必要がありました。そのため、通常の股関節では考えられない動きを人工関節に与えてしまう為、脱臼をなくすことは困難でした。
脱臼の心配がある為、日常生活動作にすくなからず制限を必要としたのがTHAの欠点の一つでした。
MISは股関節周囲の支持組織の損傷を極力少なくすることを目的として考えられた体に優しい低侵襲性手術です。技術の進歩と術者の熟練により、MISは筋腱温存手術、さらに一歩進んだ関節包靭帯温存手術へと進化を続けています。
MISの浸透・進化により術後の脱臼は極めて少なくなっています。その中で私が行っているMIS-THAは、Antero lateral supine approach(以下ALSA:仰臥位前側方進入法)とも言われています。
ALSAは2009年本邦に紹介され、2010年入念な準備とともに本邦では比較的早期に私も取り組み始めました。
これは筋腱温存のみならず関節包靭帯温存まで対応可能な方法です。
もう少し簡単にお話しすると、股関節の痛みがあっても、関節の変形の程度や動き具合、脚の長さの差など誰一人として同じ状態の方はいません。そのような時に、同じ切り方をするのではなく、状態に応じて適切な切り方を股関節周囲の支持組織に行う事ができる方法がALSAなのです。

術前の準備

THAの対象となった方は、一般の術前検査とともに、可能であれば自己血貯血を行います。
さらに、術後早期の回復を目的に術前から積極的にリハビリ指導を行います。
医師側は三次元CTを作成し、コンピューター画面上でシミュレーションを行うとともに、単純レントゲンをトレースして二次元的な作図も行い、正確な手術のために入念な術前計画を行います。

実際の手術

皮切は通常10㎝以内です(平均8㎝程度)。
入念な準備に基づいて手術を行いますが、骨の形や質、人工関節の種類は様々です。
正確にそして安全に手術を行うため、手術中にレントゲン透過装置(以下Cアーム)を使用しています。
これにより術前に予定した位置・角度に人工関節を設置します。
さらに2018年8月より本邦に先駆けてCアーム装着型中支援装置を使用することにより設置の制度が向上しています。

術後のリハビリテーションプログラム

可能であれば術後1日目もしくは2日目に歩行を許可します。通常1週間以内には片杖にて屋外の歩行訓練をおこないます。2週間程度で退院となりますが、屋内での杖なし歩行・車の運転(自転車やバイクは通常二ヵ月以上経過して許可しています)。入浴は可能な状態で退院となります。

治療事例
  • 変形性股関節症変形性股関節症
    股関節の関節が変形し、
    痛みがおこります
  • THA手術後THA手術後
    変形した股関節は人工股関節に
    置き換えられ痛みが改善します
  • 自己血採血の様子自己血採血の様子
    体調や術式に合わせて術前に
    400~800mLを数回にわけて
    採血し手術に備えます

変形性股関節症Hip osteoarthritis

加齢に伴って、関節内の軟骨が磨り減ったり、傷ついたりした結果、関節全体が徐々に破壊され、また関節周囲に異常な骨が新しく形成されて、歩行時や股関節の曲げ伸ばしの時などに痛みを生じる疾患です。
股関節だけでなく、臀部全体や時として膝周囲にいたる広い範囲に痛みを感じ、坐骨神経痛と間違えられることもあります。歩行の時に身体が左右に傾いてしまう「跛行(はこう)」もしばしば見られる症状です。
特に原因がなく、加齢とともに生じる変形性股関節症(一次性股関節症)だけでなく、先天的に股関節の構造に異常がある場合や、股関節の他の病気やケガがもとで変形性股関節症を併発してしまう場合(二次性股関節症)も少なくありません。

初期の場合は坐骨神経痛などとの鑑別に注意しながら診断を進めますが、歩行に異常をきたすほどの進行した状態や二次性股関節症であれば、初診時の症状やレントゲン検査によってすぐに診断できることがほとんどです。

  • 保存的治療

    体重のコントロールや杖の使用など、ライフスタイルの見直しや、リハビリ(運動療法)が基本的な治療と言えますが、症状が強い場合や日常生活動作に支障をきたしている場合などには消炎鎮痛剤の内服が必要になることも少なくありません。
    リハビリでは、体幹や下肢のストレッチ、脚を外側に向かって広げる時に働く「中臀筋(ちゅうでんきん)」という筋肉を強化する訓練などを主に行いますが、適切な運動療法を行わないとかえって痛みが増すこともあるので注意が必要です。
    難治性かつ慢性の痛みに対しては、変形性膝関節症と同様に「トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合製剤」が有効なこともあります。膝関節と異なり、股関節へのヒアルロン酸の関節内注射は一般的ではありません。

  • 手術による治療

    あらゆる保存的治療を試みても痛みが改善せず、生活の質が低下してしまっている場合には、手術による治療を行います。
    変形性股関節症には後述する関節唇損傷もしばしば合併することから、初期の股関節症であれば、関節鏡(内視鏡)による股関節唇縫合や股関節唇部分切除でも十分な除痛効果が得られることがあります。
    関節内の変形がある程度限局しており、まだ若年の患者様の場合には、大腿骨や寛骨臼の骨の角度を矯正する、骨切り手術が行われることがありますが、関節全体に変形が及んでいる進行例や、高齢者での変形性股関節症には人工関節置換手術を行って、痛みを解消します。

股関節唇(こかんせつしん)損傷Hip joint lip injury

骨盤側のくぼみである寛骨臼(かんこつきゅう)を口に見立てた場合、その縁に文字通り唇のように位置している軟骨が股関節唇です。靭帯などと共に、股関節の安定性に深く関与しているため、股関節に無理な力が働いた際などには、この股関節唇が傷ついて、痛みの原因となります。サッカーや野球などのスポーツ活動中に損傷することもありますが、加齢に伴って徐々に関節唇が損傷していくこともあり、幅広い世代に見られるのも特徴です。動作時に股関節が「ずれたような」感覚や「ポキッという」異常な感覚を生じたり、股関節を前方に曲げたときに痛みや違和感を生じる場合に、股関節唇損傷を疑います。

診断

変形性股関節痛と同様に初期には診断が困難で、坐骨神経痛や鼡径(そけい)部症候群と診断されることもあります。
特定の姿勢で股関節痛が誘発されることが診断上有意義で、MRIは必須の検査です。MRIで関節唇に異常信号が確認できればほぼ診断が確定します。

治療

変形性股関節症と同様に、初期には日常生活の見直しや、運動療法、薬物療法などの保存的治療を行います。 保存的治療を行っても十分に症状が改善しない場合には、関節鏡(内視鏡)下手術を行って除痛を図ります。

  • 大腿骨頭壊死症 レントゲン画像
  • 大腿骨頭壊死症 レントゲン画像
  • 大腿骨頭壊死症 人工関節置換術後

先天性股関節脱臼(せんてんせいこかんせつだっきゅう)Congenital hip dislocation

出生前後に股関節が脱臼した状態を従来から先天性股関節脱臼と呼んでいますが、近年では出生後の発育過程で生じる脱臼も多く見られることから、発育性股関節脱臼と呼ばれることもあります。
女児に多く、原因としては遺伝要因や子宮内での姿勢の異常、出産時や出生後の力学的な要因などが考えられています。

予防

新生児や乳児が仰向けに寝ている場合、股関節を曲げて、かつ関節を外側に開いた状態が自然な姿勢ですから、この自然な姿勢や関節を開く動作の妨げになるようなおむつの使用は避ける必要があります。無理に股関節を後ろ側に伸ばしたり、まっすぐの姿勢を強制したりすると、脱臼の原因となることがあります。抱っこする場合でも、関節が閉じた状態での抱っこを日常的に行うことは避けるべきです。

診断

脚の長さや、太腿部分の皮膚のしわが左右非対称であったり、股関節を開く動作で強い抵抗や異常音を伴うと股関節脱臼が強く疑われます。レントゲン検査や超音波検査で大腿骨頭の位置異常が確認できれば診断が確定します。
また先天的に寛骨臼が浅い(臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん))が股関節脱臼の原因になることもあり、やはりレントゲン検査で確認します。

治療

新生時の軽症例では上記の股関節脱臼の予防に留意していれば、自然に治癒することもありますが、乳児期に股関節脱臼が残っている場合は、専用の装具を使用した装具療法を行って脱臼した関節を正常に戻す(整復(せいふく)する)ことを試みます。しかし、装具療法を行っても脱臼が整復できないこともあり、その場合は入院した上で牽引療法や麻酔下の徒手整復を行います。
関節内に整復を阻害する障害因子があって、どうしても整復が不可能な場合や、幼児期まで成長し、歩行するようになってもなお脱臼が整復されずに残存している場合には、手術による治療が選択されます。

大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)Femoral head necrosis

骨頭と呼ばれる大腿骨の関節内部分が壊死(細胞が死んで、構造も維持できなくなった状態)したために、徐々に骨頭が崩れるように変形して、強い痛みや歩行障害を生じる疾患です。片側股関節で大腿骨頭壊死を発症した場合、約半数で反対側の大腿骨頭にも壊死が見つかると言われています。骨折や脱臼がもとで大腿骨頭壊死を生じることがあり、その他にも癌の治療のための放射線が原因となることもあります。また原因がはっきりしない特発性(とくはつせい)大腿骨頭壊死は比較的若い世代に発生し、ステロイド剤の使用やアルコールの過剰摂取が原因の骨頭壊死も特発性大腿骨頭壊死に含まれます。

診断

股関節やその周囲の痛みで発症することが多く、問診では過去の骨折や脱臼、放射線治療歴などの情報がとても重要です。特発性大腿骨頭壊死の場合には、特徴的な症状に乏しいため、レントゲンやMRIなどの画像検査が必須です。
進行した大腿骨頭壊死では骨頭の変形など、特徴的な異常が見られますが、まだレントゲンで診断ができない初期の段階ではMRIが非常に有用です。

治療
  • 保存的治療

    大腿骨頭の中でも、体重がかからない部分が壊死している場合は、痛みなどに対する対症療法だけでよいと考えられていますが、壊死範囲が拡大することもあるので、定期的な経過観察が必要です。
    松葉杖を使用するなどして、長期間壊死部分に体重がかからないようにできれば、壊死部が修復され治癒することも期待できますが、実際には下肢に体重をかけないで生活することはとても困難なため、壊死範囲が広い場合や体重のかかる部分に壊死を生じた場合には、手術による治療が行われます。

  • 手術による治療

    大腿骨頭の中でも、壊死せずに健康な状態を維持している領域が十分にある場合には、この健康な部分を荷重部に利用する骨切り手術が行われ、また比較的早期の骨壊死の場合には骨頭への骨移植を行って、壊死部の再生を促す治療が選択される場合もあります。一方、進行した大腿骨頭壊死では、骨頭だけでなく関節全体に変形を生じるため、骨切り手術だけでは十分な効果を得ることができず、人工関節置換手術が適応となります。